住宅ローンの固定金利型はリスクが高いので注意が必要です。

住宅ローンを組む際に金利を固定型にするか、変動型にするか迷いませんか?

それぞれに一長一短がありますが、固定金利型を選択する方は、将来の金利上昇リスクを考え、返済計画の立てやすさや将来設計が立てやすいという理由が多いようです。

タイトルにある「固定金利型」がリスクが高いということに違和感を覚える方もいらっしゃると思います。リスクが高いのは変動金利型では?というのが一般的な考え方です。

筆者自身、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー資格を有し、住宅ローンを組んだ経験が3回あり、固定金利型も変動金利型も経験したので、それぞれのメリットとデメリットは身をもって分かっています。では、どうして固定金利型がリスクが高いのか以下説明しますので、住宅ローンを申し込む際の参考にしてください。





固定金利は損をする

固定金利のメリットとして挙げられる返済額(利息が確定)がしており、返済計画、将来設計が立てやすさということですが、変動金利の場合も返済額は同じであり、内訳(元本と利息)が異なるのみです。金利の上昇リスクを言われる専門家も大勢いますし、マスコミやネットの記事を見ても10年以上前から「変動金利は危ない」と言い続けていいます。

 

しかし、実際はどうでしょうか。約20年間に渡り金利水準は変わらず、変動金利はずっと低金利のままです。結局、10年固定や全期間固定金利を当時選択した方は、変動金利の金利上昇リスクを恐れるあまり、変動金利を選んだ人よりも多くの利息を払っているという本末転倒な結果が待っているのです。

また、バブル崩壊後、日経平均株価は上昇し続けているため、今後の金利上昇リスクを唱える専門家もいますが、実際に残高、元金が減っているのであれば、金利がゼロコンマ数パーセント上がったところで、それほど返済に支障はありません。固定金利の中でも一番損をしやすいのが「10年固定の住宅ローン」です。

 

10年固定が一番損をしやすい

これは、当初10年間の金利を固定にするというもので、特定の期間は銀行の優遇金利を受けるため返済額を抑えられるというもので、各銀行の主力商品の一つでもあります。金利はマーケットの長期金利、すなわち10年国債の金利などを基準に決められます。

10年固定の住宅ローンは、当初固定金利なので、当初期間は一定の優遇金利が適用されるので一見お得な金利タイプに思ってしまうのですが、落とし穴として、当初固定金利の終了後に変動金利に変更した場合には、はじめから変動金利を選んだ人よりも高い金利が適用されてしまいます。

仮に全返済期間が35年あれば、残りの25年の金利が1%~2%を超える金利適用となるため、元金が大きな額であれば毎月の返済額も負担になります。

そうすると、10年固定の住宅ローンが向いている人というのは、優遇金利終了後の金利上昇リスクを受ける影響が少ない人、すなわち、返済期間が10年前後と見込める人や、借入額が1000万円台~2000万円程度と比較的少ない借入額の人ということになります。

その他の人は、10年後に住宅ローンの借り換えをするか、500万円以上の繰り上げ返済を実行して元本を減らさなければ、完済まで変動金利以上の利息を払い続けることになります。

住宅ローン、固定金利、変動金利のメリット・デメリット

 変動金利のリスク

変動金利は動型は借りている途中で金利が変動するタイプで金利は半年ごとに見直されるのが一般的です。マーケットの短期金利が動くと連動して上下します。短期金利とは取引期間1年未満の金利のことで、具体的には銀行が企業に貸し付ける際の最優遇金利である短期プライムレートに連動するのです。

変動型の金利が上下しても、すぐに返済額も変動するわけではありません。多くの銀行は、返済額の見直しは5年に一度、その間に金利が上がれば5年後に返済額も上がりますが、それまでの返済額の125%までが上限となる「125%ルール」というものがほとんどの銀行で決められています。これは急激に返済額が上がることによって、生活が苦しくなり返済が困難になることを未然に防止するためです。

ただし、金利が上がれば利息は上限なく増えるので、125%ルールが適用される場合は返済額に占める元金が圧縮され、返済しても返済しても元金がなかなか減らず、毎月の利息の支払額が毎月の返済額を超えてしまった場合は、その超えた分の利息の支払いは繰り延べられることになります。これを「未払利息」といいます。このように未払利息が発生するリスクが変動金利にはあります。



 

変動金利のリスクをコントロールする

変動金利のリスクをコントロールする方法としては、住宅ローン控除で得た所得税の還付金などを積み立てておいて、繰り上げ返済用として貯蓄又は投資運用しておくことです。

そして、金利上昇が顕著になったところで繰り上げ返済(期間短縮型を選択)を実行して元金を減らします。そうすることで未払利息の発生を防ぐとともに元金を減らすことで利息も大きく減らすことができ、金利上昇リスクを上手にコントロールすることが可能になります。

 

繰り上げ返済は極力しない

繰り上げ返済は金利上昇リスク・未払い利息時にやむを得ずに行いリスクをコントロールするもので、原則として、現実的なリスクも生じていないのに繰り上げ返済には賛同しかねるというのが筆者のスタンスです。

それは住宅ローン控除の恩恵を受けている間は、残高に応じた所得税の優遇措置を受けることができるためというのが一番の理由です。せっかくの節税を受ける機会を自ら放棄するのはもったいないと考えます。満額・最大限の優遇措置を受けてからの繰り上げ返済でも遅くはありません。

もう一つは、手元の大切なお金をむやみに返済に充てないことです。借り入れから5年後に100万円繰り上げ返済をしても、10年後に同額を繰り上げ返済しても長い返済期間からみると、低金利の現在ではそれほどのメリットを享受できるものとは思いません(当然ながら金利が3%~に高い時代であれば繰り上げ返済の効果が高いため積極的に勧めていますが、今は時代が違います)。

それよりも手元資金を潤沢に残しておくことで、不意に起こる突発的な臨時支出に充てることができますし、家族旅行など余暇を愉しむことができます。

余裕資金を削って繰り上げ返済ばかりしている方もいらっしゃいますが、それで生活が楽しめずに苦しくなるのなら何のためにマイホームを買ったのかよく分かりません。

「老後の生活が不安だから、早めに住宅ローンを終わらせたい」という方も多いと思います。それならば、手元の資金、生活費や余裕資金を投資信託(iDeCo、つみたてNISA)で運用して老後の貯えも住宅ローンの返済と同時並行して行うことをお勧めします。



最後に

不動産会社やハウスメーカーの営業担当から言われるがままに住宅ローンを組むのはやめてください。絶対に後悔します。引き渡した後は、施主がどれだけ金利負担に苦しむのかなんて残念ながら考えてくれません。

特に10年固定特約付きの住宅ローンを組む際は、「当初10年」後の金利がどのようになるのかを銀行員から納得いくまで説明を受けて返済計画書を作ってもらってください。

仮にこのタイプの住宅ローンを組むことになった場合は、11年目以降に繰り上げ返済をするか、住宅ローンを借り換えるかを当初から予定しておいた方が賢明です。繰り上げ返済をするにしても、借り換えをするにしてもまとまったお金が必要になりますので、住宅ローン控除を受けて還付された所得税を別口座に貯蓄する、投資信託で運用するなどして準備する必要があります。